※※が来たら,彦衛にお前と過ごす夜は幸福だと,伝えてみても良いかもしれないー
いつかの日の家族のように身を寄せ合って眠る二人を窓辺から雲のかかる月にかわって星が静かに照らしていた。
※※が来たら,彦衛にお前と過ごす夜は幸福だと,伝えてみても良いかもしれないー
いつかの日の家族のように身を寄せ合って眠る二人を窓辺から雲のかかる月にかわって星が静かに照らしていた。
※※※
ーあの時,
温かい幼馴染みの腕の中で定摂は考える。
「ー※※の方は始末した方がよいかもしれん」※※の非情な言葉に「それは違うんじゃねぇか」と即座に声を上げたのは,彦衛だった。
「俺は※※って奴等が嫌いだが,だからといって理由もなく他人の命を奪おうとは思わねえ」
その言葉に踏み出す勇気を得て,定摂は偽りの塒を伝えるよう言い含めて巻き込んだ園糸を放す策を立てたのだった。彦衛は「俺はお前みたいに賢くない」だから,考えるのはお前に任せた,とよく口にするが,この幼馴染みはいつも正しい方向を向いていた。
※※※
ーあの時,
温かい幼馴染みの腕の中で定摂は考える。
「ー※※の方は始末した方がよいかもしれん」※※の非情な言葉に「それは違うんじゃねぇか」と即座に声を上げたのは,彦衛だった。
「俺は※※って奴等が嫌いだが,だからといって理由もなく他人の命を奪おうとは思わねえ」
その言葉に踏み出す勇気を得て,定摂は偽りの塒を伝えるよう言い含めて巻き込んだ園糸を放す策を立てたのだった。彦衛は「俺はお前みたいに賢くない」だから,考えるのはお前に任せた,とよく口にするが,この幼馴染みはいつも正しい方向を向いていた。
たどり着いた※※の賑わいに呆然として動けないでいる朋友から彦衛は目を離さないよう気を張りつめていた。
※※※
たどり着いた※※の賑わいに呆然として動けないでいる朋友から彦衛は目を離さないよう気を張りつめていた。
※※※
大柄な彦衛に比べ一回り小柄で肉付きの薄い定摂だが、彼には聡明さと落ち着きがあった。自らの考えを押しつけることなく、人の話をよく聞いて対立する相手とも理に沿って落としどころを探す柔軟さがあり、誰に対しても柔和で丁寧な態度を崩さない。人柄を見込まれて閭胥となった後は大事の場では里の代表として流されることなく立つ芯の強さもある。
大柄な彦衛に比べ一回り小柄で肉付きの薄い定摂だが、彼には聡明さと落ち着きがあった。自らの考えを押しつけることなく、人の話をよく聞いて対立する相手とも理に沿って落としどころを探す柔軟さがあり、誰に対しても柔和で丁寧な態度を崩さない。人柄を見込まれて閭胥となった後は大事の場では里の代表として流されることなく立つ芯の強さもある。
心に空白を抱えたまま必死に閭胥の任を務める定摂を自身の事情でこれ以上悩ませたくはなかったから、これで良いと思っていたし、定摂との関係は〜今になっても幼馴染みの朋友のままだと思っている。
心に空白を抱えたまま必死に閭胥の任を務める定摂を自身の事情でこれ以上悩ませたくはなかったから、これで良いと思っていたし、定摂との関係は〜今になっても幼馴染みの朋友のままだと思っている。
同時に理解してしまった、俺が恨んでいた、憎んでいたのは特定の誰かじゃなくて良心に背を向けて罪を犯したことで居場所を失くしたこの世全てなんだと。
台輔やあの方の計らいでこうして里が再建できることは言葉にならないほどに有り難いが、俺自身が手前勝手な恨みに他人を巻き込もうとした賊徒だということは忘れないし、折りにつけて、俺はここに居て良い人間かということを考えずにいられない。
ぼんやりしていて悪いな、と定摂は時おり見せる透明な眼で彦衛を見上げると腕を伸ばした。
同時に理解してしまった、俺が恨んでいた、憎んでいたのは特定の誰かじゃなくて良心に背を向けて罪を犯したことで居場所を失くしたこの世全てなんだと。
台輔やあの方の計らいでこうして里が再建できることは言葉にならないほどに有り難いが、俺自身が手前勝手な恨みに他人を巻き込もうとした賊徒だということは忘れないし、折りにつけて、俺はここに居て良い人間かということを考えずにいられない。
ぼんやりしていて悪いな、と定摂は時おり見せる透明な眼で彦衛を見上げると腕を伸ばした。
ひどい言葉を投げつけられても激することもなく、困った表情を浮かべながら淡々と務めを果たす定摂がどうにも放っておけず、独り身だと家の中のことが回らないのだと愚痴を漏らす風を装って、以前のように里家に住むつもりだった定摂に自身の家での同居を提案した時は首を傾げられたが、土匪によって唯一の肉親だった母を失った彦衛の悲嘆を知っているだけに強く誘えば朋友が抵抗することはなかった。
ひどい言葉を投げつけられても激することもなく、困った表情を浮かべながら淡々と務めを果たす定摂がどうにも放っておけず、独り身だと家の中のことが回らないのだと愚痴を漏らす風を装って、以前のように里家に住むつもりだった定摂に自身の家での同居を提案した時は首を傾げられたが、土匪によって唯一の肉親だった母を失った彦衛の悲嘆を知っているだけに強く誘えば朋友が抵抗することはなかった。
※※※
一度あんなにも守ろうとした里を失ってから、痩せぎすの身体から生気が薄れ、より一層内面の懊悩を悟らせなくなった幼馴染みを心配する気持ちは、里を排斥された時、追われるのは一人でいいと言った定摂に半ば無理やりついていった時からますます強くなっていた。
※※※
一度あんなにも守ろうとした里を失ってから、痩せぎすの身体から生気が薄れ、より一層内面の懊悩を悟らせなくなった幼馴染みを心配する気持ちは、里を排斥された時、追われるのは一人でいいと言った定摂に半ば無理やりついていった時からますます強くなっていた。
※※※
王に命じられた兵士たちに伴われて廃里となっていた南牆に戻り、南牆に罪は非ずとした布告の下、離散先から呼び戻された里人と共に里の再建に取り組むこととなった。
密告で褒賞を得た罪が暴かれることを恐れる余り、年若い定摂一人を首謀者として追放した里人に、彦衛とて複雑な思いを抱かなかったといえば嘘になるが。
※※※
王に命じられた兵士たちに伴われて廃里となっていた南牆に戻り、南牆に罪は非ずとした布告の下、離散先から呼び戻された里人と共に里の再建に取り組むこととなった。
密告で褒賞を得た罪が暴かれることを恐れる余り、年若い定摂一人を首謀者として追放した里人に、彦衛とて複雑な思いを抱かなかったといえば嘘になるが。
www.pixiv.net/artworks/857...
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