ちょも則
華が次々と開いていく。
光の中、則宗は目を細めていた。
「綺麗だなぁ」
急に、空間が赤く染まる。——まるで、血のように。
「則宗!」
思わず、腕を掴んだ。
「どうした? 僕の山鳥」
「いや……」
「可笑しな子だねぇ」
そのまま則宗の肩を抱く。
寄り添ううちに、色は移ろいでいった。
ちょも則
華が次々と開いていく。
光の中、則宗は目を細めていた。
「綺麗だなぁ」
急に、空間が赤く染まる。——まるで、血のように。
「則宗!」
思わず、腕を掴んだ。
「どうした? 僕の山鳥」
「いや……」
「可笑しな子だねぇ」
そのまま則宗の肩を抱く。
寄り添ううちに、色は移ろいでいった。
ちょも則
「では、行ってくる」
「気をつけて」
気合いを入れるように、山鳥毛の肩を叩いた。
だが、山鳥毛は何も言わずにこちらを見る。小首を傾げると、腕を広げてきた。
「……ああ!」
広げられた腕の中に収まり、もう一度呟く。
「必ず、帰ってこいよ」
込められた腕の力が、答えを示していた。
ちょも則
「では、行ってくる」
「気をつけて」
気合いを入れるように、山鳥毛の肩を叩いた。
だが、山鳥毛は何も言わずにこちらを見る。小首を傾げると、腕を広げてきた。
「……ああ!」
広げられた腕の中に収まり、もう一度呟く。
「必ず、帰ってこいよ」
込められた腕の力が、答えを示していた。
ちょも則
「赤、だな」
則宗の髪に真紅の簪を飾ると、鏡越しの則宗が呟いた。
「気に入らないか?」
「いいや」
則宗の表情は、今にも歌い出しそうだ。
「……似合うな」
「ふふ、おまえさんの色だからなぁ」
振り返った則宗の頬は赤く染まっている。
「ああ、私の色だ」
そっと腕の中へ抱きしめた。
ちょも則
「赤、だな」
則宗の髪に真紅の簪を飾ると、鏡越しの則宗が呟いた。
「気に入らないか?」
「いいや」
則宗の表情は、今にも歌い出しそうだ。
「……似合うな」
「ふふ、おまえさんの色だからなぁ」
振り返った則宗の頬は赤く染まっている。
「ああ、私の色だ」
そっと腕の中へ抱きしめた。
則宗と南泉
「御前」
「んー?じじいに何のようだ?」
「じじいって」
「僕は、ただの則宗だからね」
南泉が言葉を失うと、則宗はからりと笑う。
「……御前は、御前だろ」
「そうだなぁ……ありがとよ」
則宗が、少し高い位置の南泉の頭を撫でる──その手付きは変わらない。
南泉はただ目を伏せた。
則宗と南泉
「御前」
「んー?じじいに何のようだ?」
「じじいって」
「僕は、ただの則宗だからね」
南泉が言葉を失うと、則宗はからりと笑う。
「……御前は、御前だろ」
「そうだなぁ……ありがとよ」
則宗が、少し高い位置の南泉の頭を撫でる──その手付きは変わらない。
南泉はただ目を伏せた。
ちょも則
雷光が暗闇を裂く。隣に眠る山鳥毛が、ぱちりと目を開けた。
「のりむね……?」
おりた前髪で、いつもより幼く見える。
「ここにいるぞ。おやすみ」
そっとその頭を引き寄せる。
「うん……」
山鳥毛が胸の中で小さく頷いた。
遠く雷鳴が聞こえてくる。
──だが、ここだけは、静かだった。
ちょも則
雷光が暗闇を裂く。隣に眠る山鳥毛が、ぱちりと目を開けた。
「のりむね……?」
おりた前髪で、いつもより幼く見える。
「ここにいるぞ。おやすみ」
そっとその頭を引き寄せる。
「うん……」
山鳥毛が胸の中で小さく頷いた。
遠く雷鳴が聞こえてくる。
──だが、ここだけは、静かだった。
ちょも則 嵐の前
「おお!」
少し開けた雨戸の隙間から、強い風が入り込む。
「危ないぞ」
「わかってる」
則宗は頬杖をつき、外を眺めている。先程よりも風が強まっていた。
「則宗、もう仕舞いだ」
「……つまらん」
雨戸を閉めると、則宗は不服そうに唇をとがらせる。
その仕草に、山鳥毛は笑いを零した。
ちょも則 嵐の前
「おお!」
少し開けた雨戸の隙間から、強い風が入り込む。
「危ないぞ」
「わかってる」
則宗は頬杖をつき、外を眺めている。先程よりも風が強まっていた。
「則宗、もう仕舞いだ」
「……つまらん」
雨戸を閉めると、則宗は不服そうに唇をとがらせる。
その仕草に、山鳥毛は笑いを零した。
ちょも則
にわか雨に降られ、廃屋に飛び込む。纏わり付く服に、則宗は舌打ちした。
「濡れたな」
山鳥毛が、ハンカチで頬を拭いてくる。
「……誰が触って良いと言った?」
「ふむ。言われてないな」
じとりと睨みつけるが、その手は止まらない。
「……まったく」
則宗は溜め息をつき、目を閉じた。
ちょも則
にわか雨に降られ、廃屋に飛び込む。纏わり付く服に、則宗は舌打ちした。
「濡れたな」
山鳥毛が、ハンカチで頬を拭いてくる。
「……誰が触って良いと言った?」
「ふむ。言われてないな」
じとりと睨みつけるが、その手は止まらない。
「……まったく」
則宗は溜め息をつき、目を閉じた。
雛ちょもと則宗
「お頭様」
小首を傾げて見上げるのは、小さき雛鳥。
「……どういうことだ?」
傍らの審神者を睨む。
彼は弾かれたように「バ、バグですッ!」と叫んだ。
「お頭様……?」
雛が、そっとズボンの裾を引く。
「大丈夫だぞ」
優しく頭を撫でる。目を細める雛に、思わず笑みが零れた。
雛ちょもと則宗
「お頭様」
小首を傾げて見上げるのは、小さき雛鳥。
「……どういうことだ?」
傍らの審神者を睨む。
彼は弾かれたように「バ、バグですッ!」と叫んだ。
「お頭様……?」
雛が、そっとズボンの裾を引く。
「大丈夫だぞ」
優しく頭を撫でる。目を細める雛に、思わず笑みが零れた。
ちょも則
「火をくれないか?」
山鳥毛が音もなく近寄ってくる。
煙草の先端を向けると、山鳥毛が先端を合わせて息を吸う。互いの煙草が赤く光った。
もう煙草は短い。最後に大きく吸って、煙を山鳥毛へ吹きかけた。
「お先に」
灰皿に押し当てた煙草が、細く煙をくゆらせていた。
ちょも則
「火をくれないか?」
山鳥毛が音もなく近寄ってくる。
煙草の先端を向けると、山鳥毛が先端を合わせて息を吸う。互いの煙草が赤く光った。
もう煙草は短い。最後に大きく吸って、煙を山鳥毛へ吹きかけた。
「お先に」
灰皿に押し当てた煙草が、細く煙をくゆらせていた。
ちょも則
クツクツと鍋が沸き立つ。
束ねた髪がふわりと動くのを見て、口元が緩んだ。
「山鳥毛、味見をしてくれ」
差し出されたものを、口を開けて迎える。
「美味しい」
「ふふっ」
頬をつつく指を捉えて、唇を寄せる。
「くすぐったいぞ」
笑う則宗を、そっと腕の中へ閉じ込めた。
ちょも則
クツクツと鍋が沸き立つ。
束ねた髪がふわりと動くのを見て、口元が緩んだ。
「山鳥毛、味見をしてくれ」
差し出されたものを、口を開けて迎える。
「美味しい」
「ふふっ」
頬をつつく指を捉えて、唇を寄せる。
「くすぐったいぞ」
笑う則宗を、そっと腕の中へ閉じ込めた。
ちょも則
「加州の坊主は面白いなぁ」
「あんたの方だろ?」
笑い声と共に、二振りが傍らを通り過ぎる。
脇へ寄った山鳥毛の指先が、一瞬掴まれ、するりとなぞられた。
振り返っても、その背はもう遠い。
「……参ったな」
山鳥毛は顔を覆う。
辺りには、甘い菊の香りだけが漂っていた。
ちょも則
「加州の坊主は面白いなぁ」
「あんたの方だろ?」
笑い声と共に、二振りが傍らを通り過ぎる。
脇へ寄った山鳥毛の指先が、一瞬掴まれ、するりとなぞられた。
振り返っても、その背はもう遠い。
「……参ったな」
山鳥毛は顔を覆う。
辺りには、甘い菊の香りだけが漂っていた。
ちょも則
すっかり戦支度は調っている。一筋の乱れも、皺もない。だが、あえて互いの首元のネクタイに手を伸ばし、締め直す。
「今日もいい男だな」
「知っている。貴方もな」
ただ触れるだけの口付けを交わす。
「怪我するなよ」
「貴方も気をつけて」
互いに背を向け、歩き出した。
ちょも則
すっかり戦支度は調っている。一筋の乱れも、皺もない。だが、あえて互いの首元のネクタイに手を伸ばし、締め直す。
「今日もいい男だな」
「知っている。貴方もな」
ただ触れるだけの口付けを交わす。
「怪我するなよ」
「貴方も気をつけて」
互いに背を向け、歩き出した。
審神者とちょも則
朝からどこか気怠そうだった則宗を探して、本丸を歩いていた。
「あ……」
ふと中庭の向こう、開け放たれた障子の奥に、眠る則宗の姿。
その頭を撫でる刺青の入った手だけが見えた。
審神者の口から吐息が漏れた。そのまま踵を返す。
大きく伸びをして、ゆっくりと歩き出した。
審神者とちょも則
朝からどこか気怠そうだった則宗を探して、本丸を歩いていた。
「あ……」
ふと中庭の向こう、開け放たれた障子の奥に、眠る則宗の姿。
その頭を撫でる刺青の入った手だけが見えた。
審神者の口から吐息が漏れた。そのまま踵を返す。
大きく伸びをして、ゆっくりと歩き出した。
ちょも則
読んでいた本が、ふいに下から持ち上がった。
「……邪魔するぞ」
本の下から覗き込んできた則宗が、山鳥毛の脚の間へ入り込む。そのまま山鳥毛の胸元に頭を預けた。
もたれ掛かる則宗の髪が、頬をくすぐる。
「少し、寝る」
目を閉じた則宗に口付けを落として、山鳥毛はページをめくった。
ちょも則
読んでいた本が、ふいに下から持ち上がった。
「……邪魔するぞ」
本の下から覗き込んできた則宗が、山鳥毛の脚の間へ入り込む。そのまま山鳥毛の胸元に頭を預けた。
もたれ掛かる則宗の髪が、頬をくすぐる。
「少し、寝る」
目を閉じた則宗に口付けを落として、山鳥毛はページをめくった。
南泉と則宗
南泉は座り込んだ。不意を突かれて負った傷がじくじく痛む。
「チッ……全然、駄目だにゃ」
「南泉一文字」
頭上から声が振ってくる。
「僕が選んだ山鳥毛が、お前を選んだ……あとはわかるな?」
見上げた先には、扇子に隠れた口元。だが瞳はまっすぐと南泉を見ていた。
「……うっす!」
南泉と則宗
南泉は座り込んだ。不意を突かれて負った傷がじくじく痛む。
「チッ……全然、駄目だにゃ」
「南泉一文字」
頭上から声が振ってくる。
「僕が選んだ山鳥毛が、お前を選んだ……あとはわかるな?」
見上げた先には、扇子に隠れた口元。だが瞳はまっすぐと南泉を見ていた。
「……うっす!」
お頭則宗
抱きかかえていた体が、ずしりと重みを増す。
足を止めると、すうすうと寝息が聞こえてきた。
「やれやれ……本当に雛だなぁ」
この雛もいずれは、抱えきれないほど大きい鳥となる。
「お前は、どんな刀になるんだろうなぁ」
そう呟いた言葉に、答えはない。
もう一度抱えなおして、歩き出した。
お頭則宗
抱きかかえていた体が、ずしりと重みを増す。
足を止めると、すうすうと寝息が聞こえてきた。
「やれやれ……本当に雛だなぁ」
この雛もいずれは、抱えきれないほど大きい鳥となる。
「お前は、どんな刀になるんだろうなぁ」
そう呟いた言葉に、答えはない。
もう一度抱えなおして、歩き出した。
雛ちょも
茂みの中から引き出されて、目に入ったのは黄金だった。
「お、お頭様っ!」
声が、思いの外大きく響く。
「元気な雛だなぁ」
笑う則宗に、そのまま抱え上げられる。
ぐらついて、思わずしがみついた。
「あっ」
離れようとすると、背をぽんと撫でられた。
温かさに、そっと頬を寄せた。
雛ちょも
茂みの中から引き出されて、目に入ったのは黄金だった。
「お、お頭様っ!」
声が、思いの外大きく響く。
「元気な雛だなぁ」
笑う則宗に、そのまま抱え上げられる。
ぐらついて、思わずしがみついた。
「あっ」
離れようとすると、背をぽんと撫でられた。
温かさに、そっと頬を寄せた。
ちょも則
指で、汗ばんだ則宗の背骨をなぞっていく。
「こら、邪魔をするな」
びくりと震えても、返事は素っ気ない。
「服が着れないだろうが……」
「つい、触りたくなるんだ」
伸びる指から、身を捩って逃げる。背は隠れてしまった。
「……残念」
「また、な」
小さい口づけの音だけが、残った。
ちょも則
指で、汗ばんだ則宗の背骨をなぞっていく。
「こら、邪魔をするな」
びくりと震えても、返事は素っ気ない。
「服が着れないだろうが……」
「つい、触りたくなるんだ」
伸びる指から、身を捩って逃げる。背は隠れてしまった。
「……残念」
「また、な」
小さい口づけの音だけが、残った。
則→ちょも
「……気に食わん」
意味もなく、机をトントンと叩く。視線は一点から逸らせなかった。
上杉刀と笑い合う山鳥毛——ここからでもわかるほど、屈託ない笑み。
「……楽しそうで、何よりじゃないか」
そう口にしてみたが、どうにも面白くない。
則宗は重々しく息をついて、視線を逸らした。
則→ちょも
「……気に食わん」
意味もなく、机をトントンと叩く。視線は一点から逸らせなかった。
上杉刀と笑い合う山鳥毛——ここからでもわかるほど、屈託ない笑み。
「……楽しそうで、何よりじゃないか」
そう口にしてみたが、どうにも面白くない。
則宗は重々しく息をついて、視線を逸らした。
姫鶴と則宗
則宗がふわと口を開いた。息と共に間の抜けた声がもれる。
「なに、寝不足なの?」
「んー……少しな」
則宗は目を擦りながら答えた。その瞼はほとんど開いてない。
「じゃあ、今夜、いい夢をさーびすしてあげる。……なんちて」
「……ありがとよ、姫鶴」
則宗は小さく笑った。
姫鶴と則宗
則宗がふわと口を開いた。息と共に間の抜けた声がもれる。
「なに、寝不足なの?」
「んー……少しな」
則宗は目を擦りながら答えた。その瞼はほとんど開いてない。
「じゃあ、今夜、いい夢をさーびすしてあげる。……なんちて」
「……ありがとよ、姫鶴」
則宗は小さく笑った。
則宗と日光
「……暑い」
天を仰ぐと、雲一つない青空が広がっていた。
「御前、手を動かして下さい」
息をついて、鈴なりになった茄子を一つ手に取る。
ぷちと音をたててもいだ。
「……冷たい物を用意してます」
背中越しの声が耳に届く。
「さっさと終わらせるぞ!」
則宗は次の実に手を伸ばした。
則宗と日光
「……暑い」
天を仰ぐと、雲一つない青空が広がっていた。
「御前、手を動かして下さい」
息をついて、鈴なりになった茄子を一つ手に取る。
ぷちと音をたててもいだ。
「……冷たい物を用意してます」
背中越しの声が耳に届く。
「さっさと終わらせるぞ!」
則宗は次の実に手を伸ばした。
ちょも則 帰還
玄関先は、出迎えの者達で溢れていた。
「……いた」
人だかりの中、目当ての姿を見つける。一瞬だけ視線が交わるが、すぐに逸らされてしまう。
遠ざかる則宗の背を見つめて、ひとつ息を吐いた。
──少しでも、話がしたいのに。
喉までせり上がった声は、飲み込んだ。
ちょも則 帰還
玄関先は、出迎えの者達で溢れていた。
「……いた」
人だかりの中、目当ての姿を見つける。一瞬だけ視線が交わるが、すぐに逸らされてしまう。
遠ざかる則宗の背を見つめて、ひとつ息を吐いた。
──少しでも、話がしたいのに。
喉までせり上がった声は、飲み込んだ。
ちょも則 出迎え
帰還した男士の中に、目当ての相手を見つける。
白い衣装は土埃で汚れてはいるものの、血などはついていない。
ふと小さく息をついた。
「……え?」
──ふいに、山鳥毛と目が合った気がした。慌てて逸らして、そのまま踵を返す。
喧噪が遠のくほど、自分の鼓動がやけに耳についた。
ちょも則 出迎え
帰還した男士の中に、目当ての相手を見つける。
白い衣装は土埃で汚れてはいるものの、血などはついていない。
ふと小さく息をついた。
「……え?」
──ふいに、山鳥毛と目が合った気がした。慌てて逸らして、そのまま踵を返す。
喧噪が遠のくほど、自分の鼓動がやけに耳についた。