【61-A】
(アレアさん……
やはり、何かを隠してる)
シヴィルは、アレアの手をとって、語りかけた。
「私はアレアさんが善い人であると信じています。
こうして、助けに来て下さったのですから。
ですから、アレアさんも、私を信じて……
何があったのか話して下さいませんか」
「……私は、善人などではないのです。
ゼルゼレイの甘言に乗せられ、リドリスの巫女である貴女を捕らえる手助けをしてしまった」
【61-A】
(アレアさん……
やはり、何かを隠してる)
シヴィルは、アレアの手をとって、語りかけた。
「私はアレアさんが善い人であると信じています。
こうして、助けに来て下さったのですから。
ですから、アレアさんも、私を信じて……
何があったのか話して下さいませんか」
「……私は、善人などではないのです。
ゼルゼレイの甘言に乗せられ、リドリスの巫女である貴女を捕らえる手助けをしてしまった」
【112-A】
気を失っていたアレアが目覚めると、そこは自室のベッドの上だった。
何故だか長いこと、とても陰鬱な夢を見ていた気がする。
「アレアさん!」
まだ少し朦朧とする視界に、シヴィルの姿が映る。
「大丈夫ですか、お体の具合は?」
「ええ……」
応えながら身を起こすと。
視界の端に、とても懐かしい白い姿を見た気がして、アレアは言葉を失った。
【112-A】
気を失っていたアレアが目覚めると、そこは自室のベッドの上だった。
何故だか長いこと、とても陰鬱な夢を見ていた気がする。
「アレアさん!」
まだ少し朦朧とする視界に、シヴィルの姿が映る。
「大丈夫ですか、お体の具合は?」
「ええ……」
応えながら身を起こすと。
視界の端に、とても懐かしい白い姿を見た気がして、アレアは言葉を失った。
【105-B】
そこには――
薄闇の中、アレアが無表情に佇んでいた。
「アレアさん!」
否――
感じられる気配は、穏やかな彼女のものではあり得ない。
今の彼女を支配しているのは――
「アルマンド伯爵……!」
「……ほう。
儂のことを知っていたか」
アレアの唇からこぼれた呟き。
その声は、アレアのようでありながら、年老いた男のようでもあり、邪悪な意思をみなぎらせたおぞましい幽鬼のようにも響いた。
【105-B】
そこには――
薄闇の中、アレアが無表情に佇んでいた。
「アレアさん!」
否――
感じられる気配は、穏やかな彼女のものではあり得ない。
今の彼女を支配しているのは――
「アルマンド伯爵……!」
「……ほう。
儂のことを知っていたか」
アレアの唇からこぼれた呟き。
その声は、アレアのようでありながら、年老いた男のようでもあり、邪悪な意思をみなぎらせたおぞましい幽鬼のようにも響いた。
【110-A】
魔王は落胆を隠さなかった。
そのままつかつかと、アレアの姿をしたアルマンドに歩み寄り、
「……もう良い」
呟くと、その喉元の首飾りに掌を向けた。
「ひ、ひぃッ!」
《御使い様、何を!?》
アルマンドの無様な悲鳴と、驚くシヴィルの念話が重なる。
かざした掌の先に、光が弾け――
ぱきっ、とあっない音と共に、アレアの首飾りは、粉々に砕け散っていた。
途端に。
アレアの全身から、白い湯気のようなものが立ち上ると、それは一塊の霊体の姿となった。
【110-A】
魔王は落胆を隠さなかった。
そのままつかつかと、アレアの姿をしたアルマンドに歩み寄り、
「……もう良い」
呟くと、その喉元の首飾りに掌を向けた。
「ひ、ひぃッ!」
《御使い様、何を!?》
アルマンドの無様な悲鳴と、驚くシヴィルの念話が重なる。
かざした掌の先に、光が弾け――
ぱきっ、とあっない音と共に、アレアの首飾りは、粉々に砕け散っていた。
途端に。
アレアの全身から、白い湯気のようなものが立ち上ると、それは一塊の霊体の姿となった。
【94-B】
《今の私と、御使い様のような状態に?》
《我らとはそもそも原理が根本的に異なるのだが……
まあ今の状態としては似たようなものかもしれんな。
だがおそらくアレア自身は、そのことに気づいていまい。
ゼルゼレイはアレアが心神喪失の時を狙って、『アルマンド』を植え付けたのだ。
そしてアレアも気づかないうちに、アレアの中にアルマンドが蘇った……
いずれアルマンドは娘の身体を完全に奪い取り、アルマンド本人となるであろう》
《それでは、アレアさんの意識は、いずれ消えてしまう……!》
【94-B】
《今の私と、御使い様のような状態に?》
《我らとはそもそも原理が根本的に異なるのだが……
まあ今の状態としては似たようなものかもしれんな。
だがおそらくアレア自身は、そのことに気づいていまい。
ゼルゼレイはアレアが心神喪失の時を狙って、『アルマンド』を植え付けたのだ。
そしてアレアも気づかないうちに、アレアの中にアルマンドが蘇った……
いずれアルマンドは娘の身体を完全に奪い取り、アルマンド本人となるであろう》
《それでは、アレアさんの意識は、いずれ消えてしまう……!》
📕1月26日発売📕
#私の推しは悪役令嬢。第3部
『振り向きなさい、わたくしに!』
❖━━━━━━━━━━━━━━❖
レイたちの娘、アレアが主人公のGLファンタジー
#花ヶ田 先生の美麗なイラストもお楽しみください
#ふりわた
amzn.to/4q8q9MV
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【58-C】
「――アレアさん!」
「……お静かに。
今、出して差し上げます」
それは紛れもなく、昨夜から姿の見えなかったアレア本人だった。
懐から鍵を取り出し、シヴィルの檻を開ける。
【58-C】
「――アレアさん!」
「……お静かに。
今、出して差し上げます」
それは紛れもなく、昨夜から姿の見えなかったアレア本人だった。
懐から鍵を取り出し、シヴィルの檻を開ける。
【112-B】
(エセリオ……!)
その愛おしい姿は、無事なアレアを見つめて、小さく微笑んだように見えた。
「……アレアさん?」
シヴィルの言葉に、はっと我に返ると――
もうその姿は、幻のように消えてしまっていた。
意識を取り戻したアレアは、シヴィルの口から、自分の知らぬところで起きていたゼルゼレイと父アルマンドの企み、そしてその顛末の全てを聞かされた。
そして、一年も前から続いていた、唐突な意識の喪失と、その間に起きていた不可解な出来事について、ようやく納得いったようだった。
【112-B】
(エセリオ……!)
その愛おしい姿は、無事なアレアを見つめて、小さく微笑んだように見えた。
「……アレアさん?」
シヴィルの言葉に、はっと我に返ると――
もうその姿は、幻のように消えてしまっていた。
意識を取り戻したアレアは、シヴィルの口から、自分の知らぬところで起きていたゼルゼレイと父アルマンドの企み、そしてその顛末の全てを聞かされた。
そして、一年も前から続いていた、唐突な意識の喪失と、その間に起きていた不可解な出来事について、ようやく納得いったようだった。
アレアの父。帝国と対立するルシティア王国の貴族だが、帝国と内通していた。
肺の病により余命わずかのところ、帝国から来たゼルゼレイに延命の術を開発させる名目で、術の実験用に村人を攫うことを黙認していた。後にアレアに憑依していたことが発覚、魔王に祓われた。
アレアの父。帝国と対立するルシティア王国の貴族だが、帝国と内通していた。
肺の病により余命わずかのところ、帝国から来たゼルゼレイに延命の術を開発させる名目で、術の実験用に村人を攫うことを黙認していた。後にアレアに憑依していたことが発覚、魔王に祓われた。
【74-A】
「――アレアさん!」
いまにもゼルゼレイに突きかかろうと身構えていたアレアを、シヴィルが押しとどめた。
そして、アレアの手元にそっと触れ、その手に握りしめていた短剣をすっと奪い取ると、彼女を護るように、その前に立つ。
「下がっていてください。
あの者は、私が斃します」
「非力な貴様ごときが、この私を斃すだと?」
ゼルゼレイの、カカカッ、という耳障りな哄笑。
「英雄の血、女神の血。
いかにその血を引こうとも、貴様は所詮ただの小娘。
魔王陛下が蘇りし時、滅ぼす使命を帯びながら、争いを嫌うあまり、戦う術すら学んでこなかった愚かな貴様が!」
【74-A】
「――アレアさん!」
いまにもゼルゼレイに突きかかろうと身構えていたアレアを、シヴィルが押しとどめた。
そして、アレアの手元にそっと触れ、その手に握りしめていた短剣をすっと奪い取ると、彼女を護るように、その前に立つ。
「下がっていてください。
あの者は、私が斃します」
「非力な貴様ごときが、この私を斃すだと?」
ゼルゼレイの、カカカッ、という耳障りな哄笑。
「英雄の血、女神の血。
いかにその血を引こうとも、貴様は所詮ただの小娘。
魔王陛下が蘇りし時、滅ぼす使命を帯びながら、争いを嫌うあまり、戦う術すら学んでこなかった愚かな貴様が!」
【108-A】
「今のあなたは、アレアさんの首飾りに宿った、魂の残滓に過ぎません」
「――儂が…馬鹿な、そんなことが!」
白い指がおそるおそる、アレアの首筋に輝く、その首飾りをなぞる。
「ふん、こんなもの、何の変哲もない――
さては小娘、そんな虚言で儂を惑わそうというか!」
「確かめるのは簡単です。
その首飾りを外してみればいい。
それだけで、『あなた』は、アレアさんの身体から離れ、その身体の支配力を失う」
「ぐぬッ……!」
アルマンドはシヴィルの言葉を疑いながらも、それを試すことはできない。
シヴィルは言葉を続けた。
【108-A】
「今のあなたは、アレアさんの首飾りに宿った、魂の残滓に過ぎません」
「――儂が…馬鹿な、そんなことが!」
白い指がおそるおそる、アレアの首筋に輝く、その首飾りをなぞる。
「ふん、こんなもの、何の変哲もない――
さては小娘、そんな虚言で儂を惑わそうというか!」
「確かめるのは簡単です。
その首飾りを外してみればいい。
それだけで、『あなた』は、アレアさんの身体から離れ、その身体の支配力を失う」
「ぐぬッ……!」
アルマンドはシヴィルの言葉を疑いながらも、それを試すことはできない。
シヴィルは言葉を続けた。
【44-A】
「いえ、さすがに、それは申し訳なく……」
「ご遠慮なさらず。
むしろ、寂しい一人暮らしの家ですもの、泊っていって下さると嬉しいわ」
アレアにそう言われては、さすがに断るのも忍びない。
「そ、それでは、お言葉に甘えて……」
《……やれやれ……》
魔王の呆れ声。
居間で寛ぎながら、食事の後片付けをしているアレアの様子を見ていると、魔王が語りかけてきた。
《あのアレアという女、妙だとは思わぬか?》
《そうでしょうか?》
《知り合ったばかりの旅人に、家に招待するばかりか寝泊まりまでさせるとは》
《とても親切な方だとは思いますが……》
【44-A】
「いえ、さすがに、それは申し訳なく……」
「ご遠慮なさらず。
むしろ、寂しい一人暮らしの家ですもの、泊っていって下さると嬉しいわ」
アレアにそう言われては、さすがに断るのも忍びない。
「そ、それでは、お言葉に甘えて……」
《……やれやれ……》
魔王の呆れ声。
居間で寛ぎながら、食事の後片付けをしているアレアの様子を見ていると、魔王が語りかけてきた。
《あのアレアという女、妙だとは思わぬか?》
《そうでしょうか?》
《知り合ったばかりの旅人に、家に招待するばかりか寝泊まりまでさせるとは》
《とても親切な方だとは思いますが……》
【107-B】
「ゼルゼレイは『反魂呪詛』を用いて、アレアさんの身体にあなたの魂を埋め込み、 融合させた。
そう、本来なら、アレアさんの意識は完全に消え、あなたは自由にその身体を使えるはず。
しかし、一年の時を経ても、アレアさんの意識は残ったまま。
あなたは今も、彼女の意識が弱まった時――気を失った時や、眠った時しか表に出てこれない。
……違いますか?」
「小娘、貴様……何が言いたいのだ?」
【107-B】
「ゼルゼレイは『反魂呪詛』を用いて、アレアさんの身体にあなたの魂を埋め込み、 融合させた。
そう、本来なら、アレアさんの意識は完全に消え、あなたは自由にその身体を使えるはず。
しかし、一年の時を経ても、アレアさんの意識は残ったまま。
あなたは今も、彼女の意識が弱まった時――気を失った時や、眠った時しか表に出てこれない。
……違いますか?」
「小娘、貴様……何が言いたいのだ?」
【114-B】
シヴィルもそれに同意し、改めてアレアに告げる。
「ダセス城へ、行ってみようと思います」
するとそれを聞いて、アレアの表情は曇った。
「ダセスの地は、無数の魔物たちが跳梁する、もはや人の住めぬところと聞きます。
その国境に広がる迷いの森は、侵入者を尽く拒み、惑わすとか」
「そういうことなら、わらわに任せるがいい!」
話に割って入ってきたのは、リンディだった。
死を喰らう冥龍としての彼女の正体は、当然アレアや屋敷の使用人たちには伏せてある。
【114-B】
シヴィルもそれに同意し、改めてアレアに告げる。
「ダセス城へ、行ってみようと思います」
するとそれを聞いて、アレアの表情は曇った。
「ダセスの地は、無数の魔物たちが跳梁する、もはや人の住めぬところと聞きます。
その国境に広がる迷いの森は、侵入者を尽く拒み、惑わすとか」
「そういうことなら、わらわに任せるがいい!」
話に割って入ってきたのは、リンディだった。
死を喰らう冥龍としての彼女の正体は、当然アレアや屋敷の使用人たちには伏せてある。
【93-C】
アレアの身に何が起こったのか。
その可能性について魔王が意識を巡らせていると、
《御使い様……》
脳裏にシヴィルの声が響いた。
《ようやく目覚めたか》
《アレアさんは……》
どうやら先ほどまでの話を聴いていたらしい。
不安げに呟くシヴィルに、魔王は――
【93-C】
アレアの身に何が起こったのか。
その可能性について魔王が意識を巡らせていると、
《御使い様……》
脳裏にシヴィルの声が響いた。
《ようやく目覚めたか》
《アレアさんは……》
どうやら先ほどまでの話を聴いていたらしい。
不安げに呟くシヴィルに、魔王は――