ブーレ
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クラシックと読書の感想を中心に書き連ねていこうと思っています。
札響の名曲シリーズを聞いてきた。今回は下野さんの指揮でトランスクリプション特集だ。最後に演奏された「展覧会の絵」はいつものラヴェル編ではなく、ヘンリー・ウッド版だった。イギリスの指揮者でラヴェルより前に編曲していたが、その後忘れられた存在になったとか。とはいえ、下野さんが言うとおりこちらの方がラヴェル版よりも原曲が持つ荒々しさがよくでている。聞いていてもなかなか暗い力強さがあってオケも良く鳴る。これを聞くとラヴェルの方が洗練されすぎていると思うほどで、この編曲版も取り上げられても良いのではないかと思った。札響がスケールの大きな演奏をして大編成オケを聞く醍醐味を堪能した。
October 4, 2026 at 12:47 PM
クライバー「ばらの騎士」DVDを視聴した。オペラでもDVDで視聴する習慣がないのだが、これはやはり欠かせない演奏なので購入してみた。1979年のTV向けの映像だが、思ったより画質は良かった。やはりクライバーの生き生きとした運びはすばらしい。評判どおりだと思った。オックス男爵をはじめ歌手陣は皆若々しい。クライバーは美声で揃えるところがあるのだろうか。他の盤でも元帥夫人はクレア・ワトソンだし。演出はオーソドックスで、舞台美術は舞台がウィーンということか少し鄙びた感じだ。各幕の始めはクライバーが写って楽しいが、この頃はまだ若い。
September 22, 2026 at 1:23 PM
ヴィスコンティ「ルーヴィヒ」をDVDで見る。最初は芸術と政治の相克みたいな見方をしていたが、あらためて見ると国王ルートヴィヒのダメっぷりもよく描かれていてそう単純にはいかないなと考え直した。エリーザベト妃を演じるロミー・シュナイダーは最初に見た時はきれいな人だと感心したが、こうして見ると大人の魅力というかそんなものも感じさせる演技だ。そしてワーグナーも実際、こんな人物だったのだろうと思わせる出来で感心した。
September 21, 2026 at 7:32 AM
ヴィスコンティが見たくなってDVDを中古で購入した。まずは「熊座の淡き星影」(1965)から。昔、上京した際に岩波ホールで見た。岩波ホールはとうとうこの時だけになってしまった。見た時はたぶん疲れていたのだろう、さっぱりわからなくて呆然とホールを後にしたのだが、今回はリベンジした。何も難しいことはなく、「エレクトラ」を下敷きにした内容だ。少し危険だけど、元々この話はこういう要素を持っていると思う。冒頭、昔好きだったBMWが出てきてときめくが、507はアメ車仕様だと思っている。先日亡くなったクラディア・カルディナーレがちょっと違う役柄に挑戦か。重厚なセット、美術、撮影はやはり腹応えがあっていい。
September 4, 2026 at 1:47 PM
「トリスタンとイゾルデ」ベーム盤がSACDになりさっそく購入した。1966年バイロイト祝祭劇場での収録で半世紀以上前の演奏だが、私にはファースト・トリスタンである。ちょうど飯守泰次郎の「ワーグナーと人生を語る」を読んでいてちょっと奇遇だ。飯守はまさにこの年バイロイトで助手をつとめはじめた。昨年、「ローエングリン」を集中的に聞いたらワーグナーがすっかり嫌になりそれから全然聞かなくなったのだが、この本を読み始めたらその気になってきて、今日の「トリスタン」で復活した。リマスターの効果が著しく、例のトリスタン和声の鮮烈な響きが強烈だ。ベームの引き締まった演奏スタイルは賛否あろうがこの演奏はすごい。
August 22, 2026 at 12:40 PM
池上英洋「官能美術史」を読む。10年以上前に台湾に行き、故宮博物館を見た。絵画を見ても女性が主題のものが全くといってなかったことを覚えている。それにひきかえヨーロッパの方はそういう絵画に枚挙の暇がない。この差は何なんだと思ったことを思い出した。それはともかく、この本の中で一番気に入った絵はスピッツヴェク「永遠なる対話」だった。庶民の街の一角で男が女に花束を捧げてプロポーズしている。さてどうなるのだろう。それは絵の中にある愛のアレゴリーに示されているというのだ。こういう絵も紹介されている。
August 17, 2026 at 11:34 AM
フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(1968)を読んだ。殺すか殺されるかという場面で人間なのかアンドロイドなのか混乱する場面は笑えた。著者はなかなか考えたな。核戦争後の世界を描いているのだが、アンドロイドはさておき気候変動のことを考えないとそれこそ生物が絶滅していき、地球を脱出しなければならなくなるのがリアルな世界だ。こんな世界になるとは当時SFですら誰も予想しなかったのだろうな。
August 11, 2026 at 2:12 PM
ブラッドベリ「華氏451度」(1953)を読む。人々が大型壁面ディスプレイや巻貝のようなイヤホンで提供される番組に夢中になり、「インテリ」が罵り語になる。本は理解できない奇妙なものになって忌避される世界が描かれるのだが、とても絵空事とは思えなかった。著者は実際、散歩中の夫妻の一方が持っていた小型ラジオを聞くばかりで会話がないのを見てこの世界を思いついたそうだが、確かにスマホの普及をみればそういう世の中に近いと思う。SFというより今ではホラーなのかもしれない。
August 1, 2026 at 1:09 PM
アーサー・C・クラーク「2001年宇宙の旅」を読む。映画は映画館でも3回見た人だが、こちらは今になってようやく。原作というより映画と同時並行で作られたとあって意外だった。そのせいかキューブリックは小説の世界をそこそこ忠実に映像化しているように思えた。小説を読んでHALを静止させた以降の映像の意味がようやく理解できたと思う。HALが暴走するところは映像だけでなく小説もよくできていて、ちょっとしたホラー味を感じたものだ。おかげで生成AIとやり取りしているとHALを思い起こすようなった。
July 27, 2026 at 2:11 PM
E.クライバーの「ばらの騎士」がSACD化されて再発売になった。1954年の古い録音なので新しいリマスターを待望していたのが、ようやく現実になって嬉しい。当時のこととて歌手もしっかり発音発声するので時代を感じるが、けっして野暮ったくはない。ウィーン・フィルはやや緩いアンサンブルを聞かせるがご愛嬌で、何よりクライバーの生き生きとした音楽がこの魅惑的なオペラを引き立てる。R・シュトラウスが第1幕前奏曲に仕掛けたいかがわしい音楽を一番見事に音にしているのはこの盤だと密かに思っている。
July 11, 2026 at 3:10 PM
トレヴァー「ラスト・ストリーズ」を読む。逝去後に発表された短編集で、衰えを心配したが杞憂だった。最後まで作品の質を保ったのもすばらしいと思う。もともと作品のラストは割り切れないものが多いのだが、この作品集でも余白がより大きいと感じるものがあった。「ミセス・クラスソープ」と「身元不明の娘」だが、読み込みが足りないのかと気になっている。「一番は?」と聞かれたら、「冬の牧歌」かな。ただ、登場人物が出来すぎているのが気になるが。相変わらず心のひだの細かい描写が秀逸で感嘆している。トレヴァーの感想が続いたが、文字どおりこれが最後になる。少し寂しい。
July 4, 2026 at 1:57 PM
ウィリアム・トレヴァー「アフター・レイン」を読む。選集ではなくオリジナルの短編集ということで凸凹があるかなと思ったが、12篇中やや平板かなと思わせたのは「小遣い稼ぎ」くらいで、後はいずれも読後に唸らせる作品ばかりでさすがと思った。1作だけ挙げれば、「失われた地」だが、時折見せる宗教色の強い作品だ。作家は一定の読者を想定しているのか、自身の信条なのか作品の中に奇跡を描くことがあって強い印象を与えるのだが、この作品もそう。おまけに歴史と政治も絡んできて、結末は本当に後味の悪いものになっている。もともと素直なハッピーエンドは期待できない作家だが、これは本当に考えさせられた。
June 26, 2026 at 2:46 PM
トレヴァー「異国の出来事」を読む。主にアイルランド・英国以外を舞台にした短篇のアンソロジーで、そのせいか宗教的な背景が少ないように思えた。しかしそれがストーリーテラーとしての美点を強調しているように思え、読んで唸らされた作品が多い。「家出」はその理不尽さでやるせなかったし、反対に「三つどもえ」は苦味強しとはいえ隠れた温かさがあって救われる。最後の「娘ふたり」は少女の微妙な心持ちにリアリティがあって感服した。男の不誠実を見抜いたのは少し嬉しい(もちろんそんな経験はないw)
June 23, 2026 at 6:23 AM
5/30,31の札響定期演奏会を聞いてきた。首席指揮者のエリアス・グランディ登場でマーラーの交響曲第3番が取り上げられた。演奏時間100分を超える大作だが、聞いていて長さを感じなかった。名演の証で、運びの巧みさが際立っていた。この巨大な作品をスケールの大きな演奏で描き出したのは指揮者の力量だと思う。今まで録音で聞いて感動することはあったが、この定期でこの曲の真価を知ったと思う。グランディと札響のコンビはこれから全曲演奏に向けて進んでいくが、ますます期待が高まってきた。双方が着実に力量を高め合っていると思うから。コントラルトはゲルヒルト・ロンベルガー、合唱は札響合唱団とHBC少年少女合唱団。
June 1, 2026 at 2:24 PM
今年初めての北大植物園へ。ちょうど今ハンカチノキの花が見頃だった。中国由来の木に咲く少し奇妙な花です。
May 15, 2026 at 11:39 AM
ボルヘス「アレフ」を読了。この短編集でどれが一番面白かったかというと、「ザーヒル」かな。ボルヘスの「貨幣論」が述べられていてこれほど非物質的なものはない、そしてあらゆる事物になりうるというのだ。少し興奮した。おまけにワーグナーの「ジークフリート」も出てくるし。最初の作品「不死の人」もホメーロスが出てきて、奇想天外な話に振り回された。
May 10, 2026 at 1:18 PM
ようやくウェス・アンダーソン監督の「ムーンライズ・キングダム」を配信で見た。のっけからブリテンの「青少年のための管弦楽入門」が出てきて好感度がいやが上にも上がる。とぼけたユーモアやギャグは相変わらずで少年少女の駆け落ちがハッピーエンドという物語と相乗効果で映画を楽しめた。もっとも、キレると刺してしまう女の子と結婚して幸せになれるのかという心配もあるのだが。見ている時は気づかなかったのだが、音楽についてエンドロールを見てみるとブリテンの曲がよく使われているようだ。この人に思い入れがあるのだろうか。なお、保安官がブルース・ウィリスだと気づかなかったのは秘密だ。
April 28, 2026 at 7:52 AM
ロサ・リクソム「コンパートメントNo.6」(2012、末延弘子訳、みすず書房)を読む。おそらく1980年過ぎの旧ソ連、モスクワ発のシベリア鉄道を舞台にしている。車窓風景、同室の男の語り、下車しての街の様子、モスクワでの思い出すべてが当時のソ連の荒涼とした惨憺たる有様を描いていて気が滅入る。小説=フィクションとはいえ、ヒロインの留学生が目にするもの、耳にするものすべてが旧ソ連とは何だったかを思い知らせる。
April 9, 2026 at 1:09 PM
ウィリアム・トレヴァーの短編集「聖母の贈り物」を読む。訳者の栩木伸明氏によるセレクトの12篇で、物語としてすばらしい出来栄えの傑作揃いだと思う。短編といってもやや長めの作品が多いし、作品によって程度が異なるが全体に苦味がきつい。体調もあったが読む進めるのがつらいものもあった。ストーリーテラーだと思う一方、人物造形が非凡で読後感は重い。心を揺さぶられたのは「ミス・エルヴィラ・トレムレット、享年18歳」で、考えさせられたのが「アイルランド便り」、なんとも後味が悪かったのが「マティルダのイングランド」だった。
March 18, 2026 at 1:13 PM
ナボコフ短篇読書会「移動祝祭日」に録画視聴で参加した。今月は「初恋」。最初に読んだ時はなかなか女の子が出てこなくて面食らったが、車窓からの電線の描写は自分も見ていたからよくわかって共感度が上がる。そして犬の名前を思い出した時の喜びもよく伝わってきて少し感動した。駆け落ちが見つかった時の家庭教師の描写が笑えたし、彼らの粋なはからいにニンマリもした。
この読書会の発表者の皆さんのレベルの高さには毎度感心している。私はきっと永遠のROMだろうな。若島先生の参考、脱線も毎回楽しみしている。ウェス・アンダーソンを見なくては。しかし、ナボコフはすごい。短編でいつも中味が凝縮した2時間半の話ができるのだ。
March 10, 2026 at 2:41 PM
ウィリアム・トレヴァー「密会」(2004)を読んでいる。作家は故人だが現代最高の短編作家と評されていて、恥ずかしながら知らずにいたので読んでみた。どこまでちゃんと読み込めているのか自信はないが、半分ほど読んで一作一作があまりにもすばらしくて夢中になって読んでいる。これほどの作品を今まで知らずにいたとは。作品によってどこかミステリアスだったり、宗教が絡んだり、性のこともありでそれぞれ個性的だ。本を読む幸せに浸っている。この本が今では古本でしか入手できないとは信じられない。
February 27, 2026 at 4:15 PM
先日、「マリアの潔めの祝日」に合わせてこの日のバッハのカンタータBWV82「われは満ち足れり」を聞いた(信仰はまったくない)。バス独唱のみのカンタータというので男の声だけかとがっかりしてかけたのだが、ソプラノの声が聞こえてびっくりした。トラックを間違えたのかと思ったらたまたまソプラノ・ヴァージョンだったことがわかった。で、それがあまりにすばらしくて感動した。歌っているのはなんとキャロリン・サンプソン女史。3曲目のアリアが美しすぎて、現役盤がなくやむなく中古でCDを買ってしまった。この人の声は今まで聞いた中で一番美しいと思った声なのだ。
February 25, 2026 at 3:02 PM
若島正先生が紹介されていた「腕くらべ」を読んでみた。荷風の作品は初めて読む。当然のことながら花柳界のことは全く不案内で、場面は成瀬監督の「流れる」を思い起こしながらの読書だった。映画は昭和、それもたぶん戦後のことなので雰囲気はだいぶ違うだろうが。花柳界の人間模様は江戸時代も大正もさほど変わることはないと思ので、荷風は物語というよりその世界のリアルを描いたのだろう。芸事、文芸、諸々の風情などの描写は懐旧に満ちていて大正当時の世相批判となっているが、エセ文学者が出てくるところは作者の憤懣がよく伝わって面白かった。荷風は読んでみようと思う。
February 24, 2026 at 2:46 PM
三島由紀夫「潮騒」を読んだ。買うのが少々恥ずかしかったのは、おおよそどんな小説か知っていたから。なぜかというともうン十年も前に中学生向けの雑誌に読書の手引にというコーナーでこの本が紹介されていたのだ(断言できないが)。たぶん作家の名前や作品を知ったのはこれが最初だと思う。読み始めて徐々に思ったのはこの作品、映画化を前提にしているなということだった。吉永小百合や山口百恵の出演は知っているが未見。場面場面がいかにも意識しているようで、作家には悪いがそう思っている。これで長い間ほったらかしにしていた宿題、ようやくやり遂げた。
February 21, 2026 at 3:09 PM
三島由紀夫「仮面の告白」を読む。三島作品はこれで2作目になる。昔、ヘンツェが「午後の曳航」をオペラにしたと聞いて読んだのが最初だ。この時は意外にカチッとした文章を書く人だなと思った記憶がある。しかしそのつもりで読み始めたのだが、例のこととは別にここでは一種独特の感覚が勝り、しかも全く理解できなかった。それでも発表の1949年当時によくこれだけの「告白」ができたなと思う。たまたま解説と重なるが、「王子の死」だとか「白い手袋」とか20年少し後の事態を思わせる表現が出てきて考えさせられた。
February 17, 2026 at 3:49 PM